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2005年11月15日

技術で生きる!

俺が、つくる! に引き続いて、岡野雅行さん本です。この本は岡野さんともう一人、樹研工業社長の松浦元男さんとの対談パートと、この二人それぞれの独筆パートからなる 2 部構成となっています。発行が 2004 年 1 月 1 日ですので、約 2 年前の本になります。

本文中、特によかったのは、

岡野初めから実績なんてあるわけないんだよ。大企業はだいたいそういうパターンだね、実績だとかそういうへったくれで始まるんだ。だから俺は腹が立つから大企業の人間とは会わない。そういうやつらと話していると精神的に疲れるんだよ。技術者同士だったらいいんだけどな。技術者同士だったら腹を割ってね、お互いに話が進むわけよ。技術屋さんなら絶対に嘘つかないからさ。
(p20)
ですね。この辺は本当に実感としてわかります。技術に対して嘘をつくとすぐにパレてしまうからです。技術者は決してそんな下手な嘘はつきませんし、心が許しません。こういった技術者談としてはまたパトレイバーを思い出します。
だがな、どんなに技術が進んでもこれだけは変わらねぇ。機械を作るやつ、整備するやつ、使うやつ。人間の側が間違いを起こさなけりゃ機械も決して悪さぁしねぇもんだ。実山さんよ。今日は二課の整備課長がメーカの工場長に会いに来たわけじゃねぇんだ。お互い女房よりも長く機械と付き合ってきた技術屋同士、腹割ったところで聞かせてもらいてぇんだ。…おたくの HOS、ありゃぁ大丈夫なのか?
榊さんの名ゼリフですね。

その他、印象に残ったのは少子化に対する言及です。

松浦日本人の人口がこれからドンドン減るでしょう。出生率が低下しているから、三〇年後になるといまの一億二〇〇〇万人の総人口が六九〇〇万人ぐらいになるそうですね。国力の低下だとか社会保障制度の限界だとか大騒ぎしていますが、私はまったくラッキーなリストラだと思ってます。マーケットが減るなんて実は小さなことで、それよりも国がスリムになることによるメリットが大きいわけです。
岡野えらい時代になるもんだね。
松浦そうするとどうなるかというと、国自体のリストラになります。いまは景気が悪いからどうにもなりませんが、六〇歳代の連中が働けないわけがありませんから、若い人の世話にならないと生きていけないわけじゃない。その上で、食料の自給の問題にしても、エネルギーの自給の問題にしても、いろんな意味でこの国の自立が達成できると思うんです。いまはとにかく人数が多すぎます。
岡野何もかも半分で済むんだもんな。
(p180-181)
この「とにかく人数が多すぎます」というのがどういった意味なのか私にはまだよくわかりませんが、時間をかけて考えていきたいと思います。パッと思いつくのは
  • 世界の総人口に比べて、更に日本人の割合は減っていく
  • 日本の経済規模は小さくなるだろうが、歳入・歳出において改善が行われるべき
  • エネルギー、食料の自給が可能となるかもしれない
…と、どうもいま一つ、釈然としません。これはもう「自立すること」に慣れていない戦後世代だからこう感じてしまうことなのか、とか、社長という立場になると「自立する」ということに対して積極的な思考になるのかな、とか考えてしまいますね。ちょっと離れた場所から考えたほうがよさそうです。

あと、やはり全編をとおしていろいろと勉強になります。松浦さんの話は実務的な示唆に富んでいて、「ISO vs TQC」の関係(考え方の違い、差異についてなど)や「自己資本比率四五%以上、流動比率二五〇%以上、固定比率一〇〇%以下、支払手形ゼロ」といった経営上の姿勢、「松下幸之助さん、井深大さん、盛田昭夫さん」や「トヨタや日産」の話など、初めて知ったことや考えさせられることがしきりでした。

技術で生きる! ISBN:4828410929


投稿者 napier : 2005年11月15日 23:56


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