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2010年05月16日

iPad

サンデーモーニングの「風をよむ」で iPad が取り上げられていました。意外と冷静なとらえられ方で、「本」というもの自体とその内容を分けてそれぞれの人がコメントをしていました。情報としての本の役割は「書いてある内容、その内容に達するまでの著者や編集者、その本の制作にかかわった人々の仕事がすべて詰まっているということ」、存在としての役割は「本というデバイスそのもの。本の匂いであったりそばに積み上げられている状態、物理的に見える本の厚さであったり個体としての量。ページをめくる感覚や時間が経って古くなっていく過程自身」などなど。 Kindle が日本でも購入できるようになったときや、それ以外の電子書籍デバイスが発売されたとき、今回の盛り上がりはそれらと比べられないほどの強さを持っています。

面白かったのはこの iPad の電子書籍としての面を強調しているにもかかわらず iBooks に関しての説明が無かったこと。日本の出版事情の説明はあったものの、その次に来るだろう電子化に対する説明は皆無。そうとらえると特に iPad だけでなく電子書籍そのものの特集であっても問題が無かったように感じます。電子書籍としての iPad の立場は単にたくさんあるアプリケーションのひとつ、でしかないわけですから。

こういった電子化でいろんな人たちが危惧することに「編集者を通さすに本ができるため、粗製濫造がはびこる」といったコメントです。これに関しては今に始まったことではなく、Web が広まった段階ですでにその時代を迎えていました。個人サイトや個人のブログなどはまさしくそれそのものです。 Google はその情報をまとめることの重要性を知り、Web site を「情報」という「本の内容」であるとすると「事後の編集者」になった、とも言えます。 Apple のやっていることは「事前編集」ですね。 iTunes Store に登録するまでに審査があり、その審査を通ったものだけが「流通」をします。審査のプロセスはそれ自体「著者と編集者」のやりとりそのものでしょう。

何にせよこういったデバイスが盛り上がりを見せるのは嬉しいことです。しかし製品を作る/売るだけでなく、出版と言うものの新しいエコシステムを作ることが重要なステップでしょう。 Apple は「iTunes Store + 個々のデバイス/ソフトウェア(iPod, iPhone, iPad, iTunes, etc...)」というシステムを作り上げています。規模の大小は分かりませんが、Amazon は「Amazon + 個々のデバイス/ソフトウェア(Kindle, KindleDX, Kindle for PC, etc...)」。日本の出版界ではどのような新しいシステムを作りあげるのか、現在の「出版社-取次-書店」の構造をどのように変えるのか、が問題でしょうね。


投稿者 napier : 2010年05月16日 09:46


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